鈴木様、M&Aを実行後、アイアクトを退任されましたが、近況はいかがでしょうか

鈴木 博展からきていただいた新社長への引継ぎを行い、2015年3月末で退任しました。現在は月に一回、非常勤役員として取締役会に参加しています。数年前から承継の準備をしていたこともあり、取引先への報告も含め、引継ぎはスムーズに進みました。社員もM&Aを開示した時は驚いていましたが、今は新しい環境で楽しく仕事をしているようです。

私自身、社長のときは24時間365日会社のことを考えていて『ゆっくりする時間』などなかったものですから、はじめは少し戸惑いました。家にいる時間が増えたことで、妻には鬱陶しがられることもありますが(笑)、社長業というなかなかできない経験を通じて得たものを社会に還元するため、今はこれから自分がすべきこと、やりたいことについて構想を練り計画をたてている段階です。

「数年前から承継の準備」とは、どのような準備をされていたのでしょうか

鈴木様 会社は無借金経営で、私も元気でしたから、特に困っていたわけではありませんでした。しかし、事業承継をするには3年はかかると思い、60歳での引退を目標に50代後半から準備を始めました。
引退について考えた時「会社は誰のものか」を追究しました。一般的に会社のステークホルダーは、株主・社員・顧客・仕入先・社会ですが、当社にとっての最大のステークホルダーは社員だと強く感じました。私が引退しても、社員が継続して楽しく働いていける会社にしなくてはならない。私には息子がいますが、「会社は誰のものか」を考えると、自分の後継者として息子であることは大きな選択基準にならないと思ったのです。そのため経営と事業執行を分離していく作業を徐々に進め、事業執行を導いていける人材の育成を進めていきました。
M&A後、重要な取引先は博展の役員と一緒に挨拶に行きましたが、経営と執行の分離体制ができていたため、取引先に自分が社長を退くことを伝えても動揺はありませんでした。

事業を執行する人材を育成されるかたわら、経営権を譲渡するためM&Aを実行されましたが、M&Aのメリットはどういったものでしたか?

鈴木様 M&Aは社内のイノベーションを起こすことができます。特にアイアクトは時代の最先端を作るITの会社です。私自身はスマートフォンにはついていけない部分もありますが、仕事はスマホ対応が当たり前の時代です。リーダーである社長には業界の先見性が必要です。一人の社長が長期間トップに座ることは、組織や事業の陳腐化に繋がります。トップが変わることで新しい事業へのチャレンジも可能性も膨らみます。

また、株の売却によって、会社のキャッシュフローを健全な状態に保ったままで、私自身の退職後の資金を作ることもできます。自社の株式上場も検討したのですが、実際には難しく、M&Aを決断するに至りました。

M&Aを進めるにあたっては、複数のM&A仲介会社を通じて買収のオファーをいただきましたが、当社のことや業界のことをよく研究していて人間としても信頼できると感じた日本M&Aセンターの西川さんに依頼しました。

そして博展様とのM&Aに至りますが、お相手に選んだ理由をお聞かせ下さい

鈴木様 当社は企業のWEB制作、運営を主な事業とした会社です。制作系の人材は豊富ですが営業力の弱さは長年の課題でしたので、M&Aの相手としては「マーケティング力・営業力があるところ」と考えていました。もしくは、同様に当社の弱みである「勘定系などの基幹システムに強みがあるところ」、そして何より「当社の企業理念が合致するところ」がいいと思い、西川さんにお伝えしました。そして西川さんは博展さんを紹介してくれました。

博展さんは東証JASDAQに上場している、展示会やイベントブースの企画・制作・運営等幅広く顧客の販促活動支援を行う会社ですが、そこにアイアクトのITソリューションを組み合わせると、新しい企画がどんどん生まれそうだと感じました。博展さんと「両社で3年後どんな将来が描けるか」をお話できたことが、最終的にM&Aを決断させました。

特殊な例だそうですが、私はM&A交渉の面談にも当社の幹部社員を同席させていました。私の引退後も残る社員が、楽しい会社の未来を描けるかどうかが知りたかったからです。M&A後の両社のビジョンを話し合ううち、博展さんの将来にもアイアクトが不可欠な存在になれると感じることができました。

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