前回に引き続き事例を紹介。

(3)AI関連のM&A

事例(3)AI関連のM&A概要

事例(3)AI関連のM&A概要

エニドアは翻訳のクラウドソーシングサービス(Conyac・コニャック)を運営する企業であり、ロゼッタは自動翻訳の開発や翻訳受託サービスを手掛ける企業である。 本案件のポイントは、両社が持つ2つの新しいテクノロジー(クラウドソーシング、AI)の融合により、双方の技術、サービスの質を高めることを目指している点である。

譲受側のロゼッタ社は専門分野(医薬バイオ、化学環境、電気電子機械、特許、法務、財務等)の翻訳に特化しており、一方でエニドアは、インバウンド市場を中心とした一般会話・外国人向け観光情報等に関連する分野に強みを持っており、両社の事業領域は、補完関係にありシナジーを見込みやすい。

しかし、より興味深いのは“AI”と“クラウドソーシング”の融合によるシナジーだ。ロゼッタによると、AIの精度向上における最大の決定的要素は学習データであり、エニドアのクラウドソーシング上で人間が行う翻訳は膨大な集合知となってAIの精度を向上させることができ、またAIの補助によって人間の作業負担も軽減することができるという。

ITソフトウェア業界におけるM&Aは、ビジネス上のシナジーは当然として、技術同士の掛け算によって技術そのものが昇華されることがある。本件はその好例であろう。 更に、ロゼッタは人間とAIは対立関係ではなく人間がAIを育成し、AIが人間を支援するという共創関係の主張を行っていることも非常に興味深い点である。AIやシンギュラリティ脅威論が実しやかに叫ばれる中、AIに対する評価がどのような変遷を辿るのか注視していきたい。

 

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AUTHOR PROFILE

業界再編部長 副部長
IT・ソフトウエア業界責任者

瀬谷 祐介

大手金融機関を経て、日本M&Aセンターに入社。新設された業界再編部において調剤薬局並びにIT業界のM&Aアドバイザーとして50件以上のM&A成約実績がある。現在は、IT業界のM&A責任者として、数多くの友好的なM&A、事業承継を実現している。